実家に長年勤めて下さった事務の方が他界しました。
(私が中学生くらいからいらっしゃるので25年の勤務です)
多くの人に「あの人は心がきれい」と言われていた方でした。
従業員をはじめ、お客さんにも言われていた素敵な方でした。
その方の思い出話です。
事務員さんは、電卓を使わずにいつも「そろばん」で計算していました。
小さな「そろばん」で帳簿の計算をする事務員さんの姿に、幼い長女は興味津々。事務員さんの隣に行っては「それなぁに?」と尋ねて、隙あらば「そろばん」を触ろうとしていました。
もちろん私は「お仕事の邪魔をしたらダメよ」と注意しましたが、私の言うことなんて聞く子ではないですからね。
事務員さんは
「これは、お仕事の道具だから貸せないのよ。これがないとお仕事できないの」と優しい笑顔で伝えてくれました。何度も何度も。
それでも、長女はしつこい!事務員さんが席を立つのを待っているんです。
トイレに行く数分の間にそろばんを奪ってニコニコしている長女。
「そろばん」を奪われた事務員さんはニコニコと「返してね」と手を出します。
私に促されてしぶしぶと返す長女。
事務員さんは、席を立つとき「そろばん」を引き出しにしまうようになりました。
長女への対策ですね。(笑)
それでも、長女はすぐに「そろばん」を見つけ出してしまいます。
そんなある日。
長女が「それなぁに?」と、お決まりのセリフを事務員さんに言うと……
「はい。これ使ってね」と、きれいなそろばんを渡してくれました。
事務員さんがつかっている「そろばん」より長くてきれい。
「使っていないモノだからいいのよ」と言ってニコニコと仕事をする事務員さん。
そのの隣で、長い「そろばん」をシャカシャカと鳴らしながら遊ぶ長女でした。
当時私は、子育ての事で周りから叱られてばかりでした。
赤の他人からも、身内からも子育ての批判をされていました。
事務員さんの対応は、ものすごくありがたかったです。
誰にでもそういう対応ができる方でした。
本当に心がきれいな人だったのです。
お客様も事務員さんには間違いがないと信頼してくれていました。
事務員さんには定年はなく、ずっと仕事をしてくれていましたが、難病になり実家を去りました。
母と一緒に病院や施設にお見舞いに行っていましたが、コロナの感染もありここ数年はお会いしていませんでした。
事務員さんが天国に旅立ったと知らせてくれたのは、甥の方でした。
事務員さんが「大切な事を書いているノート」の一番最初のページに、実家の電話番号が書いてあったそうです。
葬儀の前日の夜遅くに連絡があったそうですが、両親は家族葬に参加し、火葬場まで一緒に行かせてもらったそうです。
季節外れの桜の写真ですが……
事務員さんの大好きな町の桜を載せたいと思います。
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